1.未知の惑星
静寂が支配する未知の惑星。
そこは赤茶けた大地が覆い、毎日と言っていい程巨大な生物が自由に闊歩する世界だった。
この生物たちは日々食物連鎖の過程の中で生命を繋いでいたのだが、ある日、平穏を乱す光の筋が空に現れたことで終止符が打たれた。
空の光は徐々に大きくなると、やがて宇宙船だと判明し、それらの物が大地に着くと兵士の恰好をしあどけなさが残る少年少女たちが次々と降り立った。
兵士たちが降りた時は生物たちも何事かと見つめた。
突然来た珍客に興味を持ったのか、1匹の小型生物が少年兵に近付きじゃれたりすり寄ってくる。
少年兵はそんな状態になっても微動だにせず、おもむろに腰に付けていた拳銃を取り出し、何の躊躇もなく小型生物を撃ち始めた。
銃声と悲鳴が響き様子を見ていた他の生物たちは異常を察したのか怒り、仲間の仇を取ろうとしたのか反撃に出ると、少年少女たちも拳銃で応戦し、一触即発の戦闘状態に突入した。
2.膠着の戦況
戦闘に突入した当初は小型生物が密集している場所を探しては攻め、兵士たちは優位に戦いを進めていた。
小型生物が死ぬのはあっけなく、一掃するのに1日も掛からなかった。
一通りの作業を終えると、その直後に入れ違う形で大型生物の出現が増えた。
隊長の号令で拳銃や軽武器で押し出す戦法を取るも通用せず戦況は不利に傾いていった。
大型生物の攻撃はとても強く破壊的で、防御面が弱い兵士が攻撃を食らえばひとたまりのなく、それが原因で一時期戦いは膠着状態に陥った。
事態の打開と時間を稼ぐため煙幕を展開する新たな作戦を立てると、大型生物の弱点を突くことに集中した。
対象の住処を数人の兵士で特定するよう指示を出して捜索させると、生活拠点の場所が洞窟だと分かり、他の兵士と合流してすぐに隊列を組み、洞窟の入り口で特製の爆弾を装備し狙いを定め投げた。
一斉に爆発が轟き、洞窟は揺れ一部の大型生物の背中に当たり悲鳴が反響する。重度のやけどを負いしばらくはジタバタとしていたが時間が経つに連れて動かなくなり、隊長が死んだのを確認すると作戦が成功したのを確信した。
これ以降兵士たちは背面が弱点であると定め反転攻勢に出ることで再び前進を始めたのだった。
3.新兵器の開発
弱点が見つけた直後、兵士たちは電磁パルスの性質を利用した新兵器を開発し、それが生物にとっては更なる追い打ちになった。
拳銃から大砲に至るまであらゆる形の武器が造られ、弱点になる背面にぶつけると内部から爆発する設計になっており、たった一撃で倒れ死ぬほど効果は絶大だった。
大量に生産されるのが確立すると兵士たちに多用されるようになり、そのおかげで膠着状態から脱却し巨大生物の数は急速に減少していった。
兵器の効果もあって生物の数がいよいよ最後の1匹になり、大砲の攻撃を食らわすと強烈な爆発を痙攣をした後にそのまま絶命した。
全ての兵士で生物の死骸を見て回り、戦争が終わったのを確かめる。
お互いの顔を見ては喜びを分かち合い称えた。歓声が空にこだましその状態が数時間続いた。
4.爆散と終局
戦争は終わってから日付が変わると突然どこからかピーと音が鳴りだした。
兵士たちが安堵した顔がこわばり誰が鳴らしたのか声を掛けるものの、中央にいた兵士が急にうずくまり、全身が光り出すと同時に爆発し跡形もなく爆散した。
武器を握った腕も、仲間を助ける為に動かしていた脚も炎で塵になり、残っていたのはいぶされた火薬の残り香だけだった。
仲間が爆発したという予期せぬ出来事に周りにいた兵士が目を見開き呆然としていたが、無情にもその後にピーとまた音が鳴り、その音が聞こえた途端に逃げ出す者がいたが、抗う間もなく次々と兵士たちが爆散し、惑星は一晩中赤い小さな光の点で覆われていた。
日が昇る頃には兵士の痕跡はなく、生物がいた事やその者を駆逐し惑星で過ごしていた兵士たちを語れる者はいなくなってしまった。
5.惑星の真実
兵士が誰一人としていなくなっているのを見計らうように空に光の筋がまた伸びた。
ただ違うのは宇宙船が巨大で降り立った時に老若男女の人々が出てきて、彼らは何故か周りを探るように見渡し泣き崩れたていたのだった。
何故そのような事が起こるのか。
これには兵士にとってはあまりにも残酷な真実が隠されていた。今まで兵士たちがいた惑星は実は地球で、戦っていた生物は同じ兵士でアンドロイドであり、かつて世界中に展開していたとある企業が人類全体の労働と生活の補助をする為だけに製造された存在だった。
兵士には自己増殖の特性を備えていたのだが、ある兵士が自身の役割に疑問を抱き人類に反旗を翻すと反乱を起こし、特性が災いして人類社会に侵略し危害を加える様になっていった。企業側はシステム停止を試みたが上手く行かず、生き残った人類は宇宙船に乗り込み問題が解決するまでの間冷凍睡眠の処置を施されるのを余儀なくされていた。
企業側は問題の対策として兵士の一部に生物に見えるウイルスを仕込み同士討ちを仕掛けて戦場に送り、全ての生物が駆除した場合は兵士を証拠隠滅の為に爆破させるのも織り込み済みで今の状態に至っていた。
問題は企業側の予想ではすぐに解決にはしないのは分かっていたらしく、関係者全員が亡くなるまで隠蔽する事で事実に蓋をし地球に帰還しようとしたのだ。
重なるざわめきを聞きながら、人類は念願の地球の土を踏む。
しかし、彼らが築く新たな社会や文明は、幾多の事実を隠したまま始まるのだった。
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